ライトナー 3S ロープウェイ

世界最長のTバーリフト
 ドッペルマイヤーのゴンドラリフト Gandegg Skilift Swiss Zermatt

世界最長のTバーリフト ガンデッグTバー
世界最長の滑走式索道、ガンデッグ・Tバー。二人並んでいるスキーヤーはTバーを利用している。

Tバー、Jバーなどの滑走式索道(サーフェス・リフト)についてはこちらでも少し書いたが、今回は前半が滑走式索道全般について、後半が世界最長の滑走式索道であるスイス・ツェルマットのガンデッグTバーの現地レポートという構成。

【滑走式索道について】

現在、国内の大規模なスキー場で滑走式のリフトを見かけることは殆ど無く、もっぱら小規模なロコスキー場などに設置されていることから、滑走式索道=低コストで運用できる簡易的な索道というイメージがあるようだが、滑走式索道の本来の用途・メリットはそれに限定されない。

Tバーリフト
Horstman Tバー(カナダ/Mt.ブラッコム)のりば

索道の本場であるヨーロッパや北米の大規模なスキー場の上部には必ずと言っていいほどグレイシャー(氷河)がある。氷河というものは、絶えず少しづつ動いているのでロープウェイやゴンドラリフトの支柱のように大きな支持力が必要な支柱は建てられない。

なので、支柱の支持力が小さくメンテが容易なTバーなどの滑走式索道が採用され、実際、アルプス山脈を中心としたヨーロッパのスキー場の索道全体の半数近くは滑走式となっている。

Jバーリフト
DC Area 43(フランス/メリベル)のJバー写真だと分りにくいが、かなりの斜度。

滑走式索道
DC Area 43のJバーの終点運行装置。

【日本の滑走式索道】

日本には氷河は存在しない
*注1ので、国内の滑走式の需要は前述のように小規模なスキー場などが中心だが、かつては雫石などの大型スキー場の上部にも高速リフトやゴンドラの山頂駅から最高地点の滑り出しまでのアクセス用としてのJバーがあった。

また、現在でも大型スキー場のビギナー向け斜面付近やキッズパーク周辺などに横移動用のムービングベルト代わりとして滑走式がひっそりと設置されていることがある。

下の写真のサホロリゾートのTバーもかなり以前から存在し、現在も(多分)運用されているがゲレンデマップには記載されていない。

滑走式索道
サホロリゾート(北海道)のTバー

なお、ロープトゥ、或いはロープ塔(!)、ポニーリフトなどと呼ばれる、支柱が無くワイヤーロープに取り付けられた取手やロープ自体を握って移動する滑走式があるが、搬器または座席に相当する部位が無いため鉄道事業法で定められた旅客扱いの索道とはならない。


【世界最長のTバー、ガンデッグ・スキーリフト】

今回レポートする索道は、スイス・ツェルマットのマッターホルン・グレーシャーパラダイスのテオドゥル氷河に架かるTバー、ガンデッグ・スキーリフト(Gandegg Skilift)で、その全長は2916m。世界最長の滑走式索道として知られており、連続して架かるTバーを含めて全長3899mとされる場合もある。

2916mというと、通常は特殊索道(リフト)ではなく普通索道のキロ程であり、それもかなり長い部類に入る。国内では安比高原スキー場の安比ゴンドラ(2819m)や富良野スキー場の北の峰ゴンドラ(2957m)の全長に近く、両者はともに国内の普通索道のキロ程トップ10に入っている。

【訪問記】2016年3月

我々が最後にツェルマットを訪れたのはサンモリッツのレポートと同じ2016年。この時はイタリア国境に近い西スイスのツェルマットから、オーストリアやリヒテンシュタイン国境に近い東スイスのサンモリッツまでの291kmを氷河急行(グレイシャー・エクスプレス)で移動した。

氷河急行
氷河急行(グレーシャー・エクスプレス)

日本の鉄道ファンにも人気の高いスイスの氷河急行(氷河特急と呼ばれる場合もある)は最高地点の標高が2033mの山岳鉄道。日本の岩手山(岩手県)の山頂くらいのところを列車が走るイメージで、7つの谷と291の橋を渡り、途中に列車の上空を索道が立体交差するところもある。

ツェルマットの町
車はEVと馬車のみが通行可能なツェルマットの町。

ツェルマットはサンモリッツのような洗練された高級スキーリゾートというわけではなく、古くからマッターホルンの登山基地として冬はスキー客、夏は登山客が世界中から訪れるアットホームな雰囲気の山岳観光地。環境への配慮からツェルマットの町を走ることができる車はEV(電気自動車)と観光用の馬車に限られている。

マッターホルンエクスプレス(ゴンドラリフト)
マッターホルン・エクスプレス右上はマッターホルン。

ツェルマットの町からマッターホルン・エクスプレスというドッペルマイヤーの8人乗りゴンドラリフトで、まずトロッケナー・シュテークという標高2939mの高地まで行く。町からここまで実際はゴンドラの乗り換えが何回かあるが、大筋としてはこんな感じ。

トロッケナー・シュテークから、標高3899mのクライン・マッターホルンまではマッターホルン・ロープウェイでアクセス。日本の富士山頂より標高が高いところにロープウェイ山頂駅がある。

マッターホルンロープウェイ
マッターホルン・ロープウェイ(現在は3Sにリプレスされている)

この時利用したのは上の写真の「マッターホルン・ロープウェイと言えばコレ」というお馴染みのフォン・ロール社(Von Roll AG:スイス)の多角形の古めかしい交走式大型ロープウェイだったが、このあと2018年にライトナーのTD28(3S)にリプレイスされた模様
*注2

クラインマッターホルン
クライン・マッターホルン(標高3899m)からのアルプスの眺め。

このクラインマッターホルンから先が、マッターホルン・グレーシャーパラダイスと呼ばれる52基の索道が架かるスキーエリアで、あまり混雑していない快適なピステ。

ガンデッグTバーリフト
トロッケナー・シュテーク(標高2939m)。逆V字のガンデッグTバーの支柱が続いている。

ガンデッグ・Tバーは先ほど通ったトロッケナー・シュテークが起点となっているため、クライン・マッターホルンからスキーで標高差1000mほどを下る。

ヨーロッパや北米の滑走式索道は、山頂ちかくの急勾配の斜面に設置されることが多く、全長は数百メートルくらい、乗車(?)時間も数分というのが一般的だが、ガンデッグの場合、高低差は330mあるが行程は急勾配のところよりフラットに近い緩斜面の方が長く所要時間は約15分。

ガンデックTバーリフト
15分間延々と引っ張られる。

速度は時速換算すると約14.5キロなのでママチャリくらいのスピードは出ているのだが、見渡す限りアルプスの雪山なので結構ゆっくりに感じる。

ゴンドラリフトやロープウェイなどの場合10分以上も乗っていると退屈するものだが、自分の板に乗って15分間ずっとワイヤーロープに引っ張られているのはそれなりに面白かった。



というわけで、今回は滑走式索道について旅の備忘録も兼ねてレポート化してみた。5年前のことだと結構忘れていることが多かったので、みんなも旅行に行ったらちょっとしたメモを取っておくといいかも。


ライトナー TD28

ツェルマットの公式紹介ビデオ


ピーク2ピークゴンドラ 
名称 Gandegg
事業者 Zermatt/Matterhorn
索道の方式 Suface Lifts(T-Bar)
総延長 2,916m
高低差 330m
速度(毎秒) 4m
乗車時間 14分30秒
最大乗車人数 2人
最大輸送(毎時) 1,100人
施工 Von Roll

*注1
日本の立山連峰に存在する流動が確認された小規模な永久凍土を氷河とする説があるが、ヨーロッパや北米の氷河とは比較にならない


*注2
ライトナーTD28(3S)の公式紹介ビデオ



索道・ロープウェイ・リフト・フニテル

索道の種類

最新索道レポート

ウィスラーのゴンドラ

ロープウェイの仕組み

都市型ロープウェイについて

スキーと索道のリンク














  もどる