鉄道趣味のひとつとして廃線跡探訪は古くからありましたが、宮脇俊三氏が「鉄道廃線跡を歩く」シリーズで全国の鉄道廃線跡とその探訪全般について網羅・体系化したことによって同書はベストセラーとなり、ひとつのカルチャーとして世間一般に広く知られるようになりました。 索道も鉄道事業法に基づいて運行される鉄道の一種ですが、一般的にあまり鉄道の仲間として認識されることはなく、ロープウェイの廃線跡探訪というジャンルを扱うのはおそらく世界でもこのサイトだけです。 |
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このページでは、それらを含めた索道廃線跡探訪の実践について書こうと思います。 |
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ロープウェイ廃線跡探訪の場合、情報ソースは、以下のようになります。 1. 日本近代の架空索道/旅客索道のいずれか一冊 2. 旧版地形図 3. 国土地理院の国土画像情報(カラー空中写真) 4. 市史、郷土資料 5. 当時の観光ガイドブック、パンフレット等 6. ネット上の情報 1. 日本近代の架空索道/旅客索道のいずれか一冊 鉄道廃線の場合、机上調査の醍醐味のひとつとして「地形図から廃線の線形を読み取る」という方法がありますが、索道の廃線跡を地形図から読み取るというのは困難どころか現実的ではありません。 索道の廃線のを見つけるには(コロナ社刊)の巻末資料を活用します。 この資料には索道の事業者名、管轄陸運局などの登録データと、索道の水平長・傾斜長などのハードウェアのスペックが記載されているだけで、それぞれの索道が紹介されている訳ではありませんが、まずこの資料で「何という索道が何時、何処で開業したのか」を調べます。 |
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2. 旧版地形図 上記の資料に記載されている開業時の住所等は、市町村統合などで当該住所が存在しない場合があり、駅舎跡周辺の状況も大きく変わっていることが多いので旧版地形図(縮尺1/2.5万・1/5万)を入手し、現在の地形図と照合して正確な位置を確認します。この部分は、鉄道廃線の場合と同じです。 |
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古い観光案内や絵葉書、旅行ガイドブックなどの、図書館には無いような資料の入手は、残念ながらかなりアナログな方法に頼るしかありません。 私の場合、入手先は通勤途中に通る「古本屋」で、古いモノに対する価値観が、あまり偏っていないお店を利用するようにしています。 ヤフオクなどで、キーワードオプションを設定して網を張っておく・鉄道関係を専門に扱っている古書店をあたる、という手もありますが、こういった流通形態の場合は価値の基準が希少性だけなので、資料として閲覧したい人向けというよりコレクター(現物を持っていたい人)向きだと思います。 また、索道の営業案内や乗車券などは、現地の観光案内所・ビジターセンターなどを訪れた際に古い案内が残っていないかダメもとで尋ねてみると(かなり勇気がいりますが)、奥から出してきてくれる場合が結構あります。 6. ネット上の情報 ネットから廃線の情報を拾ってくるのは、最もかんたんで手っ取り早い方法ですが、wiki等の引用元が明記されていない情報に関しては「裏取り」のために、結局上記の作業が必要になるので、情報の「とっかかり」としての利用が向いていると思います。 また、検索の場合は、「ロープウェイ」や「索道」といった、そのものズバリのキーワードよりも、関連キーワードや地名などを使うと、思わぬ情報に行き当たる場合があります。 |
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机上調査が済んだら、いよいよ実地踏査です。 鉄道廃線の場合、踏査の対象は、廃止線の橋梁・隧道などを含む、すべての鉄道構造物に及びますが、索道の場合は、基本的に2つの駅(山麓駅・山頂駅)のみを対象とするのが妥当と思われます。 なお、支柱に関しては、索道は空中を移動するものなので、運行時代でも支柱の建っている場所自体には、利用者との直接の接点が無く、鉄道における線路跡とは意味合いが違うため、対象外としています。 |
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但し、山頂駅跡に関しては、サイトで紹介している索道廃線の約半数は、山頂まで自動車道路が通じていないので、トレッキング程度の装備は必要です。以下に必要な装備について書くことにします。 |
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【山歩きがある索道廃線跡に必要な装備】 ・ トレッキングシューズ以上(登山靴が望ましい) ・ 動きやすい服・帽子 ・ 軍手・タオル ・ リュック・ウエストポーチ等 探訪では足場の悪い所を動き回ることになるので、ポケットに車のキーや財布などを入れていると落とす場合があり、そうなると見つけるのは困難です(経験あり)。貴重品はファスナーの付いているポケットに入れるか、リュックなどに入れるようにします。 ・ スポーツドリンク等の飲料水 山頂に水場が無いことは多いので、夏は特に重要です。最低でも500mlペット1本は携行しましょう。 |
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低山の登山は、人によって難易度の感じ方が全く違うので一概に言えないのですが、強いて言うならアウトドア系の趣味を持つ人にとってはただのハイキング(実際、多くはハイキングコースになっている)、普段体を動かすことがあまり無い人にとっては、夏などはきついと感じるかも知れない程度といったところでしょう。 なお、標高1300m以上の山の場合は、実質標高差(登山口と山頂の標高差)に係わらず、一般的な登山用の装備に切り替えた方が無難です。また、積雪のある時期は遺構が雪の下に隠れてしまうので探訪には向かないでしょう。 次は、実際の探訪に必要なアイテムについて紹介します。 |
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【探訪基本アイテム】 ・地図とコンパス 探訪に地図とコンパスは必須。現在位置を確認しながら歩くことによって、道迷いを防止することが出来、樹木や建物などに視界を遮られて周囲が見通せないような場所で、路線の方向を確認する場合も役立ちます。 ・カメラ 遠隔地の場合は、簡単に再調査することが出来ないので、現地では一方向だけではなく、なるべく多くの方向から駅跡の写真を撮っておくようにします。こうしておくと、周辺に関連施設があったことなどが事後調査で判った場合などに「写り込み」が期待出来ます。 また、目立つ遺構などが多い駅跡では、つい接写が多くなりますが、背景の入っていない写真はあとで見ると位置関係が分からないので、高解像度で、ある程度引いて撮った方が良いようです。 ・資料 現地に、空中写真のコピーや現役時代の写真などを持っていくと、現状との対比が出来て便利。 ・携帯電話 万一に備えて、探訪中はいつでも外部と連絡が取れるようにしておきます。アンテナの本数はマメにチェックし、バッテリはフル充電であるようにします。 |
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これを読んでいる皆さんの中には、既にiPhoneを使っている人も居ると思いますが、使ってない人のために一言で説明すると、iPhoneとは携帯電話ではなく、「電話機能が付いたMac」です (キッパリ)。 iPhoneの、廃線探訪における最大のメリットは、これ一台で、上記の基本アイテムのバックアップ(代用)になる、という点です。例えば現地でデジカメが壊れた、携帯を落とした、地図・コンパスや資料を忘れた、といった場合も、iPhoneだけで、そのすべての機能がカバー出来ます。実際、これを使うようになってから探訪の能率が150%アップ(当社比)しました。具体的なメリットは、以下の通りです。 ・Google Mapと連動して、GPSとして機能する。 現在位置がGoogle Map上にリアルタイムに表示され、空中写真やStreet View*注1モードにも対応しているので、視覚的に分かり易く、GPSとしての測位精度も充分実用に耐える*注2ものです。 ・Officeドキュメントや画像を本体に保存し、表示出来る。 iPhoneに数百円の専用アプリ*注3をインストールすれば、ワード・エクセルなどOffice系のドキュメント・PDFファイル・画像などを本体に保存して、いつでも見ることができるので、現地に紙ベースの資料を持って行く必要がありません。 ・検索結果の電話番号をタッチすれば、自動的に電話をかけはじめる。 現地の図書館やホテルに、訪問先から電話をかける時などは、iPhoneのGoogle検索結果に表示される電話番号にタッチすれば即コールが始まるので、ある意味「104いらず」です。
*注1 さすがにロープウェイ跡には「Google号」は行っていない模様w *注2 市街地に限った場合で、山岳用のハンディGPSとの比較ではない *注3 オススメはAirFiles |
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【聞き取りについて】 机上調査で解明できなかったことについて現地で聞き取りをする、というのは一見、有効な手段ですが、廃止された索道に関しては地元の人でも知らない場合が多く、知っていても「子供の頃乗った。」「動いているのを見たことがある。」といった私的な思い出の場合が殆ど。経験上聞き取りによって有効な情報が得られたことはありません。 しかし、よく考えてみればこれは当然で、たとえ地元の人でも自分と関係の無い事業者が、何年も昔に作った施設のことなど、詳しく知らないのは当然です。 一方、当時の関係者の方、あるいは当該物件から半径500m以内(笑)に住んでいる方の情報というのは大変有効。いずれにしても、初対面の人にかなり突拍子も無い質問をするわけなので、なるべく明るく、かつ礼儀正しく聞くように心がけましょう。 |
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【危険な場所について】 観光ロープウェイの廃線跡で、いわゆる「山岳遭難」が発生するようなことは無いと思いますが、索道跡地には、危険な場所もあります。 最近では、東京・奥多摩湖北岸の倉戸山(標高:1169m)の登山道でトレーニング中の世界的登山家が、熊(ツキノワグマ)に襲われ、重傷を負うという事故が発生しています。この事故は、国内に生息するクマで人を殺傷するような「猛獣」は、北海道のヒグマだけ、と考えていた人たちに衝撃を与えました。 また、近年注目を集めているトレイルランニングでも、滑落死亡事故が発生するなど、山や、普段人が行かないような場所が非日常の世界であることに変わりはありません。索道の廃線跡は、こういった特殊な場所にあることも情報の少なさのひとつの要因でもあります。 人の接近に適しているかいないかは、その場所が、或いは自分自身が教えてくれます。前者は立ち入り禁止の看板・危険警告板・道の状態などで、後者は一瞬の状況判断から来る、いわゆる直感です。どうも接近がためらわれる、というのは「近づくな」というDNAからのメッセージを受け取っている時。素直に接近をあきらめましょう。 |
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【索道廃線探訪ノススメ】 ロープウェイ(普通索道)は、鉄道に比べて営業キロ数が短いため、鉄道の持つ交通インフラという使命よりも、レジャー関連施設として捉えられ勝ち。また、比較的小規模な資本で開業できるという点も、そのまま資料の少なさに繋がっているのかも知れません。 現在、索道の廃線探訪には、鉄道廃線本のように「ガイドブック」として機能するものはありません*注1。従ってこのページで書いたような方法で、すべて自分で調べるしかないのですが、だからこそ、そこにはパズルを解いていくような面白さがあり、廃線カルチャー登場以前の、鉄道廃線探訪の先達たちのみが味わえた「新たな発見」に巡り合える余地が残されています。 北信五岳と日本アルプスの美しい山並。(長野・山ノ内町付近から) |
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*注1 大著「鉄道廃線跡を〜」では、メジャー系の索道廃線が紹介されてるが、鉄道会社が事業者の索道以外は、鉄道編の濃密な調査に比べて、拍子抜けするくらい簡単に済まされている。それもこのサイトを作った理由のひとつ。 |
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