Kusatsu Onsen Pulse Gondola Tengu
パルスゴンドラ天狗
【草津温泉スキー場 パルスゴンドラ天狗】
今回は群馬県・草津温泉スキー場に今シーズン(2023-24シーズン)に新設されたパルスゴンドラ「パルスゴンドラ天狗」のレポート。
パルスゴンドラ天狗は、同スキー場の天狗山ゲレンデから天狗山上部までの傾斜長約452mを結ぶ単線固定循環式の索道。スキー場のシーズン開幕に合せて総工費約7億5000万円*
注1
を投じて建設された。
【ゴンドラリフトとパルスゴンドラの違い】
パルスゴンドラ(単線固定式)の仕組みについては
こちら
で書いたが、おさらいの意味で普通のゴンドラリフトとの違いをまず書こうと思う。
ゴンドラリフトでは最も多いMGD(単線自動循環式)の場合、その動作のおおまかな流れは以下のようになる。
@
ゴンドラは、エンドレスで動き続けるワイヤーロープを握索機という装置でしっかりと掴み、ロープと一緒に移動する。
A
ゴンドラが停留場の場内レールに入ると、握索機は掴んでいたロープを放す。
B
ロープから離れたゴンドラは場内レール上をタイヤ状の回送装置に押されながらゆっくりと進むので乗客の乗り降りが可能になる。
C
乗客の乗り降りが終わると、握索機は動いているロープを再びしっかりと掴み、ゴンドラはロープと一緒に動き出す。
天狗山ゲレンデ停留場。ゴンドラ3台で1編成。
一方、パルスゴンドラの場合はもっと単純明快で、ゴンドラはワイヤーロープに固定されている。
ゴンドラは停留場に入るとロープ自体が減速(または停止)することによって乗客の乗り降りができる仕組み。
また、ゴンドラはMGDのように1台づつではなく複数でひと組のグループとなる。
ゴンドラのグループが停留場に入る度にシステム全体が減速するという周期的な動きになることからパルス(脈動)ゴンドラという俗称があり、索道の方式としてはMGFP(単線固定循環式)と呼ばれる。
板は外部ラックに、ボードはキャビン内に。
パルスゴンドラは、索道の方式としてはかなり古くからあり、国外では1960年代から90年代前半に普及した方式。
短距離輸送に適した索道であるため、国内では1994年に和歌山で開催されたリゾート博での場内移動の足として一時架設されたものが第一号となる。
スキー場や通年型リゾートでの事例では国内では2016-17シーズンにニセコ ビレッジで開業し、このサイトでもレポートした「
アッパービッレジ ゴンドラ
」が最初で、その後2020-21シーズンに志賀高原で開業した「志賀高原リゾートゴンドラ」、次いでこのパルスゴンドラ天狗が3番目となる。
国外では2008年にレイク・プラシッドスキー場(アメリカ合衆国/ニューヨーク州)のオリンピックジャンプ台跡地に建設されたものを最後に建設事例がないMGFPが、国内で立て続けに架設されているのは面白い。
単線固定循環式の索道を表記する場合は、グループ数、グループを構成するゴンドラの数、ゴンドラ1台の乗車人数となり、例えば2グループ、1グループ3台、1台8人乗りゴンドラの場合は2x3x8-MGFPと表記する。パルスゴンドラ天狗の場合は4グループあるので4x3x8-MGFPとなる。
草津温泉スキー場23-24ゲレンデマップから
。
@
がパルスゴンドラ天狗
利用した感想としては、握索装置の開閉動作が無いためスムーズな発車で、走行中の振動も無く静かで快適だった。
前述のパルスゴンドラ特有の仕組みから、他のグループが停留場内に居る時間帯はゴンドラの速度は超低速になる。途中で止まったのかと思い、ゴンドラ内はザワついていたが、グリーンシーズンの観光利用の場合は景観がゆっくり楽しめて良いのではないだろうか。
天狗山ゲレンデ山頂停留場
【雑記】2024年2月
滑ろう風を孕んで 飛ぼう鳥のように 舞え 雪煙
白い白いシュプール 〜以下略
いきなり謎の歌詞で始まったが、これは1980年代後半から90年代まで草津国際スキー場(現・草津温泉スキー場)のゲレンデで流れていた草津国際スキー場のテーマソング。
これがもうバブル期のJ-POPアレンジ全開の、平成レトロな楽しい曲。間奏では「恋人がサンタクロース」など当時のヒット曲の殆ど全てでギターを弾いていた故・松原正樹氏"風"のギターソロ(本人?)まで飛び出す逸品。
で、何が言いたいのかと言うと、なんとこの曲が今回の訪問時に流れていたんですよ!天狗山ゲレンデで。
しかし耳を澄ましてよく聴くと、残念なことに歌詞と曲のアレンジが変わっていた。
歌詞の方はオリジナルには本白根・逢の峰などの規模縮小によって現存しないゲレンデ名が出てくるので仕方が無いものの、曲の方は今風にリメイクされたわけでもなくスーパーとかで流れているCMソングのようになっていた
・・・さて、パルスゴンドラ天狗だが、架設された場所は古くから「Tパラリフト」の愛称で親しまれていた天狗山ペアリフトA・B線(1970年10月運行開始、キロ程413m)があったところ。
天狗山ゲレンデ。左上に見えるリフトがTパラリフト。(2007年撮影)
パルスゴンドラ天狗の山麓停留場はTパラ時代より手前に造られていて、そのぶん索道のキロ程が伸びた。また、ゴンドラの新設に併せて旧・天狗山展望喫茶付近に展望レストラン、クリスタル天(そら)もオープン。
天狗山ゲレンデはグリーンシーズンは「天狗山プレイゾーン」となってパターゴルフ、マウンテンカート、ドッグラン、熱気球などが楽しめ、かつてはグラススキーのコースが設置されていてパラグライダーもよく飛んでいた。
標高1200mにありながら高層の建物が多い「空中都市」草津。
ちなみに2019年からは天狗山に通年で利用できるジップライン(TENGUUジップライン)がオープンした。
ジップラインは最近いろんなスキー場にあるし、一応、索道の仲間とも言えるので利用してみたい気もするけど、やっぱりいい大人が利用するのはちょっと恥ずかしいよね
というわけで、今回のレポートは終了。
名称
パルスゴンドラ天狗
事業者
草津観光公社
索道の方式
4x3x8-MGFP
開業
2023年12月16日
キロ程
452.43m
速度(毎秒)
5m
最大乗車人数
8人
@ゴンドラ
最大輸送(毎時)
662人
乗車時間
2分10秒
施工
日本ケーブル
*
注1
総工費のソース:日経新聞2023/12/12 記事。