失われたロープウェイ
廃止索道
みさき公園ロープウェイ
 みさき公園ロープウェイ

大阪・難波を基点とし、和歌山・関空・高野山を結ぶ関西の大手私鉄、南海電気鉄道株式会社(以下・南海)。

南海線みさき公園駅前の「みさき公園」は、大阪湾を望む広大な丘陵地(290.565u)に広がる動物園・遊園地・水族館(イルカショー)・大型プールなどの施設がある南海直営の総合レジャーランド。

1957年(昭和32年)に南海の創業70周年記念事業のひとつとして開園したみさき公園は、国内で初めて柵のないスタイルの自然動物園を導入したことでも知られ、全国でもトップクラスといわれる「イルカショー」を中心に関西の老舗レジャーランドとして今も変わらぬ人気を誇ります。


みさき公園の園内にはアップダウンがあるため、園内移動の手段として索道が採用され、1960年から2012年まで常に1基ないし2基の索道が運行していました。

そのひとつである、みさき公園ロープウェイは開園から8年後の1965年(昭和40年)に運行を開始した31人乗りのロープウェイ。

みさき公園ロープウェイ 1965
みさき公園ロープウェイ 
-出展:南海80周年記念:1965
この索道の事業名称は「みさき公園観光ロープウェイ」で、その名のとおり園内移動に加えて大阪湾の眺望を楽しむ観光施設でもありました。



写真のように本格的な交走式ロープウェイで、31人乗り搬器というのは当時全国の観光地で単独の施設として営業していたロープウェイの標準的なサイズ。

南海は同時期に傍系の新和歌遊園梶F和歌山南海白浜観光梶F南紀白浜でもロープウェイを運行していました。

下の写真はロープウェイ運行開始直後の1965年の園内全景。重いコンテンツは好きじゃないのですが、この写真と園内マップは細部まで見えるように写真をクリックすると特大サイズで画像表示されます。戻るときはウインドウを閉じずにブラウザのバックボタンで戻って下さい。

出展 - 南海80周年記念 1965 -

ロープウェイはスポーツランド(右側の丘)と観光灯台(左側の丘に建つ灯台型展望台)を頂上側で結んでおり、スポーツランドと海側の水族館を連絡するシングルリフトと中央右寄りの索道落下防護柵のところで立体交差しています。

2つのロープウェイ駅舎はかなり立派なもので、両駅舎の中間付近に運行中の搬器が確認できます。スポーツランド側の駅舎の右手にあるのは小型の初代観覧車。

観光灯台側の丘は敷地内では最も高い(標高47m)ので、常にアクセスの便宜が考慮されていたようで、ロープウェイ完成前の1964年に「スピードライン」*注1と呼ばれる国内初の「動く歩道」が設置されました。写真の中央左から観光灯台へ向かっているケーブルカーの軌道のようなものがそれです。


開園から57年のみさき公園の園内施設や索道を含む乗り物の入れ替えは、過去何回も行なわれていますが、以下に索道だけに限定して時系列に纏めてみました。

「みさき公園で索道に乗った。」という記憶がある人は、それがどの時代だったのかチェックしてみて下さい。

■ 第1期(1957-1959) - 索道なし
オープンから2年間は園内に索道はありませんでした。

■ 第2期(1960-1964) - シングルリフト
1960年(昭和35年)にスポーツランドと水族館を連絡するシングルリフト*注2が運行を開始。

■ 第3期(1965-1984?) ロープウェイ + シングルリフト
1982年の園内マップ.(南海電鉄みさき公園開園25周年記念乗車券)

15年以上続いたロープウェイ&シングルリフトという索道2基体制の時代。末期にあたる1982年(昭和57年)のマップには、1980年完成の宙返りコースター「ドルフィン」と大型の2代目観覧車が。「スピードライン」は既に無く、ロープウェイはこれから間もなく、おそらく82〜84年頃に運行停止となったようです。

■ 第4期(1984?-1997) - シングルリフト
1996年のマップ。(るるぶ情報版 京阪神2 1997)

このマップからパースの視点が変わり、観光灯台は左上に。1985年完成の「プールランドRiO」が右下にみえます。大型遊具が充実していた時代ですが、索道は水族館行きのリフトのみになっています。

■ 第5期(1998-2012) - ペアリフト+ シングルリフト
2007年のマップ(みさき公園50周年記念公式ガイドブック 2007)

観光灯台へ向かう索道が描かれていてロープウェイが復活したかのように見えますが、これは1998年(平成10年)に新設されたペアリフト*注3で、起点は丘の上ではなく低地の広場。イルカ館(旧・水族館)行きのシングルリフトも健在で、索道が再び2基体制に。

■ 第6期(2012-現在) - 索道なし
2014年のマップ(2014年度 園内ガイドマップ)

2012年(平成24年)のリニューアル時に2基のリフトは撤去され、現在のみさき公園に索道はありません。2つの丘へのアクセスは徒歩のみになりましたが、健康志向の時流には却ってマッチしているのでは?


1980年代には、当時大人気だった絶叫マシンを含む大型遊具を導入したことにより、年間入場者数が100万人を超え「南海のドル箱」とも云われたみさき公園。

90年台後半以降、レジャーの多様化やTDR、USJなどの進出によるレジャーランドの一極化が進むと、関西に多数あった電鉄系を含むテーマパーク・大型遊園地の大半は力尽き、南海の直営だったさやま遊園(狭山市)も閉園。

みさき公園は大型遊具を廃し、遊園地ゾーンのコンパクト化を図る一方でターゲットをファミリーに絞ることで経営を持ち直したといいます。

みさき公園にあった索道は遊具ゾーンの乗り物(別料金)扱いではなく、園内移動用なので運賃は無料(入園料に含まれる)。索道のランニングコストというのは結構馬鹿にならず、国内のスキー場の閉鎖の理由で最も多いのが索道の運行が維持できなくなる場合です。無料の索道を一気に廃止したことも、身軽になれた要因のひとつだったのではないでしょうか。


【訪問記】 2014年6月

みさき公園は関空から至近なので関東からのアクセスも容易。横浜の自宅を出て2時間ちょっとで現地に到着。園内ではちょうど妖怪ウォッチのイベントが開催中でイベントホールは開園直後にもかかわず既に45分待ち。ちいさな子供を連れたファミリーでたいへんな賑わいです。


イベントホール前

ここの最大の魅力は自然が生かされたレジャーランドだということ。園内では時間がゆっくり流れ、入場者の多くはお弁当持参で家族でのんびりとピクニックを楽しんでいるという感じです。

長い歴史を持つみさき公園だけに、園内のところどころには「ここに何かあったな」という空間や痕跡がありますが、それが何だったのかは解らないようにきちんとメンテされているのはさすが。

ロープウェイの2つの駅舎は運行停止後は倉庫に転用され、2007年のリニューアル時に完全撤去。このロープウェイ駅舎はかなり長い間残っていたので、駅舎は見たことがあるけどゴンドラは見たことがない、という人も多いのではないでしょうか。

現在、山麓駅舎は乗降場の基礎の一部が残るのみ、山頂駅舎は一切の構造物を残さずに更地化。1960年から52年間も運行し続けたシングルリフトもスポーツランドの鉄柵の下に僅かに乗降場への階段が残っているのみです。

ではまず、発着所の標高が4.6mだけ観光灯台側より低いため「山麓駅」ということになる「スポーツランド前駅」の様子。観覧車が見えますがこれは3代目で、初代と2代目とは位置が異なります。写真左側の、こんもりと高い木が茂るあたりに駅舎がありました。写真にマウスオーバーで駅跡の写真に切り替わります。


スポーツランド。写真にマウスオーバーで駅跡に

次は「山頂駅」にあたる「灯台前駅」。園内のどこからでも見える観光灯台は1961年(昭和36年)からずっとこの場所ある、みさき公園を象徴する建物。長い歳月を重ねたその姿には何ともいえない趣があります。

現在、観光灯台の階段横の鉄柵沿いにコンクリ敷きが残されていますが、これは上記のペアリフトの乗降ステージの跡。ロープウェイの駅舎はその左奥にあり、現在は低木が茂る雑木林となっています。進入禁止のようなので林の中には入りませんでしたが、観光灯台から見下ろすとそこは完全に更地化していました。下の写真にマウスオーバーで駅跡の写真に切り替わります。


観光灯台。写真にマウスオーバーで駅跡に。

今回の大阪行きは急に決まったので泉南に宿が取れず、やっと予約が取れたのが京阪のユニバーサルタワー。

美しくライトアップされたユニバーサルシティは若者を中心に大賑わい。2014年7月15日からオープンする新エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」は関東でも話題となっています。この日の泊まり客で日中、USJではなくみさき公園に居たのは私たちくらいだったでしょう。

ほのぼのと洗練、レトロとハイテク、自然と人工、そして妖怪ウォッチとハリーポッター(笑)。彼我の距離50km以内にある2つの大型レジャーランドは、それぞれお互いが持ち合わせないものを持っているように思え、それが両者の棲み分けであり共存の理由でもあるように感じられました。


みさき公園ゲート付近。写真にマウスオーバーでUSJのゲートに。


【参考資料】
南海80周年記念 -最近の10年 南海電鉄 1965年
創造と前進の10年 1976年
南海の駅:「すてんしょ」からCityまで 1980年
南海電気鉄道百年史 1985年
南海二世紀に入って -十年の歩み 1995年


索道データ
名称 みさき公園観光ロープウェイ
事業者 南海電鉄
所在地 大阪府泉南郡
山頂駅名称 灯台前
山麓駅名称 スポーツランド
開業 1965年3月2日 
廃止 N/A 
索道の方式 3線交走式
水平長 233m
傾斜長 233.05m
高低差 4.6m
支索の最急勾配 9.01°
支柱(基) なし
搬器の種類・数 箱型 2 
搬器の名称 N/A
最大乗車人数 31人
施工 安全索道

*注1
みさき公園スピードライン(機長73.6m/1964年3月20日完成/施工:安全索道)スキー場のムービングベルトなど「動く歩道」は索道メーカ-が設置する場合が多く、索道の仲間とも言える。

*注2 
みさき公園観光リフト(キロ程203m/1960年4月20日運行開始)

*注3 
みさき公園灯台リフト(キロ程137m/1998年3月19日運行開始)

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