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同索道は水族館から本渡(茂木根)海水浴場の上空を通り、対岸のクルスヶ丘公園の遊園地までの約650mを約4分で結ぶ「空中散歩」を主な目的とした昭和のレジャーブーム時代型の観光ロープウェイ。 この種の索道としては1974年(昭和49年)の開業はかなり後発ですが、有明海の眺望に優れた九州地方唯一の海上ロープウェイとして人気を集めました。 |
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【天草五橋の開通と天草国際ホテル】 まずは、天草にこの索道が開業する因子ともなった1966年の「天草五橋」の開通について少し触れることに。 かつて熊本市内への陸上交通機関によるアクセス手段が無い離島だった天草諸島では、九州本土との陸路での接続が望まれていました。 戦前に提案された天草と九州本土間の架橋案は、戦後の1953年に制定された「離島振興法」の対策実施地域に天草地域が指定されると実現への気運が高まり、1962年に三角から大矢野島・永浦島・大池島・前島を経て天草上島までを結ぶ五つの橋(天草五橋)の建設が着工されます。 ![]() 開通から間もない頃の五号橋(松島橋)奥は四号橋 −1960年代の絵葉書 当時の最先端の橋梁技術を取入れて建設された五つの橋は4年後の1966年(昭和41年)9月に同時に開通。 まだ国内にモータリゼーションの波が訪れて間もない頃であり、しかも開通当初は橋の通行が有料だったにも拘わらず天草五橋の1日の車の通行量は1万5000台を超える日もあり、開通前の1965年の天草地方への観光客の年間入込数が約57万人だったのに対し、開通後の1966年9月の「月間」入込数は63万5000人にのぼり、当時の天草は空前の賑わいをみせたといいます。 天草五橋の供用に合わせて開業した天草下島・本渡(ほんど)の天草国際ホテルは県外から天草観光で訪れる旅行者の拠点として、また海洋レジャーランドの施設は熊本周辺の人々のレジャースポットとしても人気を集め、地元のバス事業者(九州産交バス)の系列だったホテルへは熊本市内からの快速バスも運行。 天草国際ホテルと天草海上ロープウェイ。搬器の色は赤。 ![]() 同ホテルは典型的な昭和期の「娯楽の殿堂」型の観光ホテルとして天草観光の中心的な存在でしたが、21世紀を迎える頃には既に老朽化・陳腐化し始めていた施設の見直しと資本の代替わりに伴い、ロープウェイは2000年(平成12年)に約25年間に亘った運行を終了・廃止となります。 ホテルは同年、ホテルアレグリア(現・アレグリアガーデンズ天草)としてリニューアルオープンしました。 |
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【訪問記】 2019年7月 現在、天草海上ロープウェイの索道設備は何も残っていないことは訪問前に確認していたものの、現地訪問はこのサイトの基本というわけで一昨年(2019年)の九州旅行(長崎・佐賀)の初日に、足を伸ばして天草へ。 長崎空港からレンタカーで長崎市内を観光した後、雲仙方面に向い、島原の口之津港からフェリー(島鉄フェリー)で天草下島の鬼池港に上陸。 前日までの台風が去り青空が広がり始めた天草・鬼池港付近の海上。 熊本には何度か来ていますが、このルートで熊本県下に入るのは初めて。熊本空港から三角(みすみ)経由でパールライン(天草五橋)を通って本渡へアクセスする天草観光の王道パターンの逆方向からのアプローチです。 本渡町がある天草下島は天草諸島で最も大きな島なので、車で走っていてもここが島だという感覚はあまり無いです。海沿いの道路をしばらく走るとやがて前方にこの日の宿、アレグリアガーデンズ天草が。 ホテルアレグリアガーデンズ天草(旧・天草国際ホテル)と本渡海水浴場。 海側から見ると中央部分に特徴的な漏斗状の階段室の吹き抜けがあるホテルの建物は国際ホテル時代と同じものみたいですが、全体的に南欧風にリノベートされ、敷地内にはお洒落なチャペルやスパ施設なども造られてかなりアカ抜けした印象。良くも悪くもギラギラした「昭和の観光ホテル」の面影はありません(よく見るとそれなりにあるけど 満潮時には海中に半没するかたちで建てられていた水族館の建物の海側は平成期に埋め立てられ、本渡海水浴場の一部となってホテルのプライベートビーチ風に整備されています。 ![]() 愛情駅跡地付近。 索道の山麓側の水族館駅(愛情駅)があった場所は上の写真の左側の黄色い花の植え込みの後方の白いタイルの区画(旧・天草いるかワールド*注1のチケット売り場跡地)の右奥の辺りで、駅舎の痕跡は一切無し。 宅地化された幸福駅方向を望む。 山頂駅である展望台駅(幸福駅)があった対岸の丘は、現在は住宅地になっているので部屋のベランダから遠目に眺めるだけにすることに。駅舎があったのは写真の半島の中央付近。本格的な宅地造成と道路整備が行われたので、当時のなごりは皆無でしょう。 − 自分の家が建っている場所が元遊園地やロープウェイの駅があった場所って、ちょっと楽しそうかも。− というわけで、以上でレポートは終わり。 今回の天草編で、国内に6カ所架設された海上(湖・池・川は含まない)を運行する旅客索道のうちの5つの路線を既にサイトでレポートしたことになるので、最後のひとつもいずれアップする予定です。 例によって、いつになるかは未定ですが |
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2000年以降、海洋レジャーランドの施設は水族館のみがイルカやスナメリとのコミュニケーションをテーマとした「天草いるかワールド」としてリニューアルオープンし好評だったが、2010年12月にクローズした。