失われたロープウェイ

和歌浦ロープウェイ
  
新和歌遊園ロープウェイ  - 昭和40年代の絵葉書 -

和歌山市の和歌浦は万葉集にも詠われた景勝地で、白浜、勝浦と並ぶ和歌山を代表する観光地のひとつ。

新和歌遊園ロープウェイ(通称:和歌浦ロープウェイ)は山麓の和歌浦駅と和歌浦湾を見下ろす高津子山(たかつしやま:標高151m)の山頂駅を約3分で結んでいた1960年開業の索道

昭和の国内観光ブームの時代、 和歌浦はその優れた景観とJR(国鉄)和歌山駅からのアクセスの良さで多くの観光客が訪れ、特に大阪万博が開催された1970年(昭和45年)から和歌浦至近の「紀三井寺運動公園」をメイン競技場に和歌山国体(黒潮国体)が開催された翌1971年にかけて、宿泊者数はピ−ク*1を迎えます。


回転展望台
当時、高津子山の山頂には回転展望台とレストラン、小動物園、大型遊具などがあり、山麓の新和歌遊園近くには「新和歌浦レジャーセンター」という7階建ての総合レジャービルもあったそうです。





昭和40年代の案内図

しかし、1973年のオイルショック以降は他の観光地と同様に、レジャーの多様化によって次第に集客に翳りが見えはじめ、90年代に入る頃には街には営業をやめた観光施設・宿泊施設が目立つようになります。


平成4年頃のホテル「萬波」のパンフレットより。左上にゴンドラ、中央に発着所、右上に回転展望台が見える。 
そのため、近年では和歌浦と言えば「はいきょファンの聖地」という不名誉なイメージが定着しつつありました。

私は1993年に和歌浦に立ち寄ったことがありますが、その時は「あまり勢いの感じられない観光地」という印象だけで、当時は観光地のロープウェイに関心が無かったせいか、まだ運行していたはずの同索道も記憶にありません。

新和歌浦ロープウェイは設備の老朽化により1996年に休止、翌1997年に廃止となり、山頂・山麓にあった施設は完全に撤去され、和歌浦のシンボルだった回転展望台も現在はシンプルな展望台に建て替えられています。


【訪問記】 2005年8月

今回訪れてみると「はいきょ」は文字通りひとつ残らず撤去されており、有名な丘の上の大型はいホテルも完全に姿を消していました。


萬波のテラスから見えるコバルトブルーの海。
地元の徹底したはいきょ撲滅作戦は功を奏して町の雰囲気はがらりと変り、丘の上から美しいコバルトブルーの海を眺めていると、前回の訪問時にはイメージすることすら出来なかった「リゾート地」という言葉が自然に浮かんできます。

次々と観光企画を練り、施設を作ったがどれも長続きせず、結果として町には使われなくった建物が増えて荒廃したイメージになってしまった。そこでイメージアップのため、それらを放置したまま、さらに新たな企画を・・という悪循環に陥っている観光地を訪れたことがありますが、イメージアップという点では町のクリーン化が最も効果的であるということを、ここ和歌浦で実感させられました。
という訳で、今回は現地の写真が一枚きりという手抜きなレポートなので、またいずれ訪問しようかと思います。

ちなみに観光動画サイトMovieumで和歌浦の運行時の貴重な動画が観ることが出来ます。これがなんと現役の施設として紹介されているんですよね(^^;


訪問記II 】 2008年8月

夏休みに神戸の有馬温泉に行ったので、足を伸ばしてまたまた和歌浦にやって来ました。なんだかんだ言って、かなり和歌浦が気に入ってしまいました。

今度は、山頂・山麓駅跡地の写真を撮ってきました。と言っても、前回書いたように、索道施設はもう完全に無くなっているのですが、3年前の訪問時には「何も残っていない」と感じて写真を撮らなかった山頂も、このサイトを始めてから、索道跡地を見極めるスキル(爆)がアップしたせいか、けっこう当時の名残りがあるように感じられました。

前回は、新和歌遊園前バス停から案内矢印に従って、高津子山の東側から反時計回りに歩く感じのハイキングコースを通って山頂まで往復したのですが、今回は山麓駅跡広場から、索道の通っていたコースに沿った、ほぼ真っ直ぐの遊歩道を通って山頂に上がりました。


高津子山山頂
右上の写真は回転展望台があった山頂で、ページ上段の展望台の入場券の写真と同じ場所だと思われます。今回撮った写真の左側に、少し写っているのが新しい展望台です。こうしてみると、以前の回転展望台は、今の物よりかなり大きかったようです。

次は山麓駅(新和歌浦駅)跡広場です。ここはハイキングコースの入口からすぐ左に入ったところにあるのですが、前回は気がつきませんでした。広々とした展望スペースなので、現在は地元のイベントなどに使われているようです。


山麓駅舎跡地の展望広場。
そして、下の写真が山頂駅(高津子山駅)のあった場所です。手摺の向こう側の空き地の、向かって左奥方向に駅舎が建っていたようです。

今回の訪問は、時間が少し遅かったせいか遊歩道を歩いている人はいませんでしたが、一帯はよく整備されていて、山頂からの360度の展望と、和歌浦の海の色は相変わらず素晴らしいものでした。



索道データ
名称 新和歌遊園ロープウェイ
事業者 新和歌遊園
所在地 和歌山県和歌山市
山頂駅名称 高津子山
山麓駅名称 新和歌浦
開業 1960年5月15日
1997年
索道の方式 3線交走式
水平長 246.5m
傾斜長 254.39m
高低差 62.85m
支索の最急勾配 21.18°
支柱(基) なし
搬器の種類・数 箱型 2
搬器の名称 まつかぜ/しらなみ
最大乗車人数 30人
施工 富士輸送機

注1*1960年代から90年代にかけての和歌山市の主要観光地全体(和歌浦、紀三井寺、和歌山城他の合計)の 宿泊者数は、本文中で述べた通り、昭和45年から46年にかけての48万4千人をピークに、以降、昭和54年まで減少を続け、昭和55年に再び増加に転じて、同地域内にある和歌山マリーナシティで「世界リゾート博」が開催された平成6年の60万6千人を2度目のピークに、現在は42万人前後を推移している。

一方、日帰り客を含む、同エリアの入り込み観光客数は、昭和37年:122万4千人、昭和45年:257万6千人、昭和55年:400万人、平成3年:416万人、平成6年:600万人と増加傾向を示しており、俗に言われるような国内観光の斜陽化を裏付けるような統計数値は見られない。

参考統計資料: 「全国観光動向」 日本観光協会 
昭和54年度版/昭和57度版/昭和59年度版/平成4年度版/平成13年度版/平成17年度版

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