失われたロープウェイ

手稲山ロープウェイ|失われたロープウェイ
 手稲山ロープウェイ

サッポロテイネは、札幌市近郊という好立地と標高1000mを超える(1023m)手稲山のパウダースノーが人気の都市型スキー場。同スキー場のハイランドゾーンは、1972年に札幌で開催された冬季オリンピック札幌大会のアルペンスキー会場だったことでも知られています。

手稲山ロープウェイは、オリンピック開催前の1970年に完成。開催準備期間中は工事関係者と資材・物資の輸送に、開催中は選手・関係者を運び、オリンピック終了後の1974年に会場がテイネハイランドスキー場として一般向けに開業したのちも、2003年まで通年で運行しました。


手稲山ロープウェイ 初代搬器(オリンピック直前)
試運転中の初代搬器(1970年1月)-出典:第11回札幌オリンピック冬季大会公式案内)
2003年3月23日には当時の索道事業者だった札幌市により、さよなら運行も行われましたが、索道施設と運営は旧テイネオリンピアを保有・運営していた加森観光*注1に引き継がれ、03-04シーズンから営業運転を再開しています。



この2度目の営業運転は2008年まで行なわれていたようで、こちらのブログ(『乗り鉄』中心ブログ)に2006年の乗車レポートが紹介されています。

手稲山ロープウェイは完成から直近の休止(2008年)までの38年間、路線自体の変更はありませんが、現在のロープウェイ搬器は1982年に交換された2代目搬器。初代搬器はオリンピックでの運行時の定員は31名で、1974年の一般向け開業の際に41(42)名に更新されています

下のマップは現在のサッポロテイネのゲレンデマップ。マップの上半分がハイランドゾーン(旧・テイネハイランドスキー場)、下半分がオリンピアゾーン(旧・テイネオリンピアスキー場)。もともとは2つのスキー場だっただけに、かなりの規模です。


サッポロテイネ ゲレンデマップ2012-13

オリンピックでアルペン会場となったのは上半分のハイランドゾーンで、オリンピアゾーンの方はソリ競技の会場として使用されたということです。

現在のマップに手稲山ロープウェイは記載されていませんが、マップの山頂側いちばん右の黒いコース表示の右側を並行するかたちで架けられており、マップをよく見ると山麓駅・山頂駅の赤屋根がまだ描かれています。



訪問記】 2013年5月

12-13シーズンは多雪だったせいか、例年はGW前にクローズするテイネが5月まで営業(ハイランドゾーンのみ)と知り、シーズン〆の春スキー(キロロ)の最終日に念願の初テイネへ。

朝里から札樽道と一般道ですぐに到着。ここは札幌の中心部から近いので完全に日帰り向きのスキー場のようです。道理でオリンピック開催スキー場なのに関東に住む自分の周りには、ここでの滑走経験者が一人もいない訳です。

ロープウェイの山麓駅はハイランドゾーンの「北かべコース」という名物コースを滑り降りそのまま進んだところにありました。ここは山頂行きの高速リフトからは見えない位置なので、最初、既にロープウェイの駅舎は無いのかと思いました。

駅舎はオリンピアゾーンと連絡するゴンドラリフト(エイトゴンドラ)の乗降場に隣接しており、搬器も停車しているので、ぱっと見は営業しているように見えます。


手稲山ロープウェイ山麓駅
手稲山ロープウェイ山麓駅と2代目搬器。右がテイネオリンピアのエイトゴンドラ山頂停留所。

次はロープウェイ山頂駅。ご覧のとおり、雪がまだ駅舎の入り口のドアの高さまで積もっています。5月でこの雪量とはさすが北海道。なお、1972年の手稲山アルペン会場図*注2によると、男子GSコースはこの駅舎の西側の頂上部(サミット)から、北西の方向に延びていたようで、コース用リフトも2基あったようです。


手稲山ロープウェイ山頂駅
手稲山ロープウェイ山頂駅。

ちなみに山頂駅がある地点は、テイネの真骨頂ともいわれる「コース外」のすべり出しらしく、この日も駅舎左手の斜面からスタートする、いかにもエキスパートといった感じのロコが多数w

山頂からは札幌市街と日本海が一望できるということで楽しみにしていましたが、あいにくこの日は濃い霧で視界がありませんでした。

市民スキー場的な顔を持つ一方で、コアなスノーファンも唸らせるサッポロテイネ。機会があれば、今度はぜひハイシーズンに訪れたいものです。

手稲山山頂
手稲山山頂
 

最後に全国の索道ファン・スノーファンに嬉しいニュースです。ついに国内のスノーレジャー市場が17年ぶりに拡大に転じましたスキーブーム

以下のグレーフォント部分は日経新聞2013年10月18日夕刊より抜粋


− 
日本生産性本部がまとめた「レジャー白書」によると、スキーの市場規模は2012年で560億円だった。スキー場のリフトやゴンドラといった乗り物の利用料などを集計した「索道収入ベース」の市場規模だが、20年前の1992年の4割弱に縮小した。ただ前年の11年と比べると4%弱増加しており、17年ぶりに拡大に転じた。スノーボードによる利用も含まれている。  −(抜粋終わり)

まさに近年の国内スキー場・スノーレジャー関係者の様々な取り組みが実を結んだかんじですね。確かに最近は明らかに以前よりゲレンデに人が多いし、冬季の関越の混雑も毎年すすんでいるように感じていました。

上記の記事にも「索道収入ベース」とある通り、スキー場のメイン収入は索道の運賃(リフト券)であり、そもそもスキー場の索道事業は鉄道事業法に基づく「運輸業」です。この調子でスノーレジャー・索道ともに、さらに盛り上がってほしいです。


手稲山ロープウェイ|失われたロープウェイ
名称 手稲山ロープウェイ
事業者 札幌市公園緑地化協会 → 加森観光
所在地 北海道札幌市
山頂駅名称 山頂
山麓駅名称 山麓
開業 1970年2月 1974年4月1日(一般向け) 
廃止 N/A*注3 
索道の方式 3線交走式
水平長 1,000,6m
傾斜長 1,086.23m
高低差 424m
支索の最急勾配 31.47°
支柱(基) なし
搬器の種類・数 箱型 2 
搬器の名称 あさかぜ/そよかぜ
最大乗車人数 41人
施工 日本ケーブル

*注1
ルスツ・安比・サホロほか国内の主要スキー場・リゾートを運営する観光会社。

*注2 
第11回札幌オリンピック冬季大会公式案内からスキャン。

* 注3 
手稲山ロープウェイは2013年5月時点で廃止のアナウンスはされていない。但し、設備の老朽化で運休から数年が経過していること、現在は山頂まで同路線の東側を並行するかたちでフード付高速クワッド(サミット・エクスプレス) が運行していることから、このコーナーで取り上げることにした。





索道の種類

新設索道レポート





















  もどる